注意:10/19日に最下部に追記。

【奈良の妊婦さん死亡事故について】

なんともやりきれぬ感の拭えぬ本事象であるが、
まず、間違った認識を排除せねばなるまい。

確かに日本は医療技術が進歩している。
それこそ世界トップクラスであるのは疑いようも無い。
しかし、4日に1人程度の割合で
妊婦が出産に際して死亡しているという話を聞いたことがある。
どれほど医療が発達しようとも、
命の危険を伴うという根本的なところは解決に至っては居ないのだ。

今回の担当医の判断であるが、
正直詳しい事情がわからないため
はっきりと言うことは出来ないが、
何処にも落ち度は無かったと見る。
子癇発作という診断を下した以上、
妊婦を動かすことは避けなければならない。
それが誤診であったかどうかであるが、
それは今後の情報待ちとしよう。

ともかく、病院の対応に間違いはない。
受け入れ拒否されている以上
他の病院を探さなければならないし、
そこで冷静に対処できなければ、その医師は
医療の世界に必要ない。

少し哀しいことでもあるが、
医師や看護婦は死を見慣れすぎている。
人が死ぬことに大きな動揺を感じたりしない。
言ってみれば、職業病のようなものである。
ベテランともなれば、様態を見れば
"生きる"か"死ぬ"かはわかってしまう。

そして、死ぬことは珍しいことではない。
 
 
今回、最も問題とすべきなのは、
死亡した事実や、誤診かどうかなどでなく、
18の病院が受け入れを拒否した
拒否せざるを得なかった事実である。

拒否せざるを得なかったと、擁護的な書き方をしたが、
病院が拒否するたいていの理由は
めんどくさいからである。
ベッドがいっぱいなど方便に過ぎぬ。

一方で、手一杯(深夜ならなおさらだ)で
受け入れても助けようが無いのもまた真実である。
容量を超える患者を受け入れて
死なせてしまっては、
責任を問われるのは明らかなのである。

本事象は、こう言ってはなんだが、
たぶん、最善が尽くされても、
助からなかったのだろうと思う。
仮にCTで脳内出血の判断がついたところで
受け入れてくれるようになるわけがない。
 
 
 
それに輪を掛けているのが
医師や看護師の質の低下である。
残念なことに金さえあれば、
私のような人間でも医師になれる。
そして、真に能力のある人間にとって
医師(特に産婦人科小児科)はリスクばかりで
まったくリターンの無い仕事である。

人を救う使命感に突き動かされて医者をやってる素晴らしい人間は、
使命感では腹は膨れないこと、
死ぬときは死ぬこと、
などを強く実感して、
そして輝きを失うか、医療の世界から居なくなる。

最善を尽くしても助からない人間を助けようとするよりは
最善を尽くせば助かる人間に最善を尽くさねばならない。
2人とも殺すなら、1人は生かす方が良い。

そう考えることが間違ってるとは誰も言えないのだ。
 
 
 
産婦人科は特に酷いと聞く。
最初に書いたように妊婦は簡単に死ぬ。
しかし、当の本人はそれをわかっていない。
大半はまっとうな人間であるが、
中には常識のない患者も大勢居る。
そんな常識の無い患者が不摂生のすえに
医師の話も聞かずに死へ走っていくのである。
でも、その責任は医師になすりつけられる。

そんな傲慢で我が儘な患者を相手にしても
ボーナスもなにもない。
なら、開業医として小さな町医者をやってるほうが良い、と
考える医者は多くなっていくだろう。

そうやって、
開業医できるだけの能力がある医者は
町医者になり、
能力のない人間だけが病院に留まる。

当然、医者になることのリスクばかりを
見ているタマゴたちは医者をやめて
他に自分の能力を生かせる仕事を探すだろう。

こうやって、医者の量と質の低下が同時に起こるのだ。
 
 
看護師の場合はもっとひどい。
看護協会の暴走、
個々の"真面目"な看護師の過剰な労務、
安い給料、
酷い職場環境、
etcetc

誰がこの職につきたいと思うか。
量は激減し、
新しい水が加わらずに、
古い水ばかりで澱んで腐ってる。

看護師の安月給は案外知られていないが
そのへんのOLよりも安い。
各種残業手当(深夜勤務)がつくからなんとかなってるだけである。
職場環境は劣悪だ。
医者の中には、看護師より医者が偉いと勘違いしている
未だに頭の硬いバカも大勢いる。

そして、
数の減少による看護師の激務。
看護協会の看護業務の放棄。

人を救おうとする真面目な看護師は
居なくなるか、潰されるかのいずれかである。
 
 
 
本当に少子化問題を解決する気があるならば、
まず、この辺りから取り組む必要はあろう。
もちろん、教育の現場も同様である。

いずれも、質の低下が激しいのである。

なぜか、そこには共通する事項がある。

免許の更新が無いのである。
金を積んで一度取ればあとは好きたい放題できる。
質の低下を食い止めるシステムが無いのである。

それは本題の趣旨から外れるのでここまでにしておくが、

いずれにせよ、医師と看護師の質、量の共に低下は激しい。
そして、それを食い止めるシステムは
医療の歯車に用意されていない。
我々はただ、医療の崩壊を見守るしかないのか。

否。

医師や看護師の量の低下には
我々患者の横柄な態度も原因のひとつである。

別に医者が偉いというんじゃない。

ただ、人間として常識をわきまえた行動を心がけることと
人は簡単に死ぬということを理解したうえで
日々、健康に気をつけるということを実戦すれば良いのだ。

少なくとも、私たちにできることはそのぐらいしか無いのだから。

そうやって、医師や看護師が
魅力的な職業、感謝される職業、
やりがいのある職業に戻ったなら、
医師や看護師の数が少しは増えるだろう。
新しい風が入れば、また質も少しはよくなると
期待しても罰はあたらないだろう。

もし、医師を頼る機会があるなら、
ありがとうのひとつやふたつ惜しんではいけない。
それが、医療の再生の第一歩である。
 
 
追記:

本記事は、現在の医療と患者の関わりについての
問題提起が主要な要旨であるために
そういう結びとなっていますが、
最初にあげた奈良県で亡くなられた妊婦さんに
なにか問題があったとする記事ではありません。
夕輝が聞く限りでは、単に悪いことが重なったことによる
あるいは医療過誤か何かによる哀しい出来事であり、
妊婦さんとその家族には何ら落ち度はありません。
心よりお悔やみ申し上げます。

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