夕輝と闇の妹[7]
2006年8月22日 ShortStory※下書き
【闇の妹-モンスターメーカー】
7
朝日が昇りはじめ、辺りを明るく照らし出すころにドローネたちを乗せた船は東に向けて出発した。ブルガンディからシャルトン半島へ向かう船である。
ドローネは今回は、乗客として乗っていた。一日でも一秒でも早く、向かわねばならない以上、乗せてもらえる船を探す時間も惜しかった。幸い、路銀はブルガンディで稼いだ分があったので、すぐに困るということは無かった。
一日の始まりと共に出発した船は、朝の匂いに包まれて順調に航海を始めようとしていた。雲一つ無い空を見上げていると、胸がすっとする。
「順調にいけばいいんだけどね」
チチーナが甲板で目を擦りながら言う。少し眠たそうだ。ドローネもそう思った。
しかし、その順調な航海はいきなり暗礁に乗り上げようとしていた。
「ここでなら、逃げ場は無いな」
何処かで聞いたことのある声が後ろからする。ドローネとチチーナがはっとして振り返る。
聖騎士ロクサーヌである。既に剣を鞘から抜き、こちらにその切っ先を向けている。
ドローネも振り返ると同時に鞘から魔剣を抜いて構える。チチーナは慌てて手すりに立てかけられてあった槍を握る。
何事かと、下から船員が何人かあがってきたが、皆やっかいごとに首を突っ込む気は無さそうに、遠くから眺めているだけだった。
ロクサーヌは海の上なのでいつもの鎧ではなく、軽量の帷子を身に付けていた。すらりとした長身には白銀に輝く鎧がよく似合っていたが、地味目な帷子では、彼女の長い四肢を隠すことはできずに、白い脚が船員の視線を集めていた。
「覚悟ッ」
ロクサーヌが先制の一撃を放つ。ドローネの間合いの外から、長い脚で踏み込んで、ドローネに斬りかかる。ドローネは剣をかざし、軽く受け流して反撃を狙うが、ドローネの一太刀もロクサーヌに受け流される。
チチーナは様子をうかがうが、敵味方が接近した状態で打ち合ってる間に槍で入る隙は無さそうだった。
ロクサーヌは確実な間合いで攻撃を繰り出し続けた。ドローネも鎧を着ていないので、露出した腕や脚に傷が少しずつ増えていく。ドローネもまた反撃を加え、ロクサーヌの四肢に小さな傷を付けていく。
互いに決定打を放てぬままに、鋼と鋼がぶつかる音が響き、二人の息づかいが静かな船上でチチーナの耳にまで届く。
「・・・うーん勝負はつかなさそうね」
チチーナは呟く。隙があれば助太刀したいが、その隙も無ければ、一対一の決闘の邪魔はしたくないという思いもある。
闇と光の戦いは長い歴史に渡って続けられている。闇が隆盛した期間もあれば、光が全土を覆った期間もある。いずれにしろ、ソフィア聖堂の聖騎士と闇の軍団は出会えば戦う運命にあるのだ。もはや、それは世界のルールであった。
船上の戦いはまだ続いていた。二人はそれぞれ傷を増やしながらも決定的な打撃は与えられずにいた。
そのとき、波に煽られて船が大きく揺れた。ぼーっと見物に徹していた船員の何人かが転び、チチーナもまた手すりに掴まった。
ロクサーヌは大きく姿勢を崩し、上体が宙を泳ぐ。ドローネは小さな体を低くし、体勢を崩さずに剣を横に薙ぐ。
鋼のあげる悲鳴が響き、ロクサーヌの剣が甲板の端まではじき飛ばされる。同時に体勢を崩したロクサーヌは倒れ込む。
勝負あった。ドローネは体勢を整え、魔剣をロクサーヌに向ける。ロクサーヌも覚悟を決める。
ドローネは、静かに魔剣を腰に戻した。
「なっ」
ロクサーヌが声をあげる。
「まあ運が良かっただけだと、私の勝ちは勝ちね。あなたにはやらなければならないことが他にもあるでしょうし、もう邪魔はしないでね」
ドローネはそう言って、ロクサーヌに背を向ける。
チチーナがロクサーヌの剣を拾って、ドローネの言葉に続ける。
「これは没収しとくわね。港についたら返してあげるから、ブルガンディにさっさと戻ることね」
ロクサーヌは肩を落としていたが、すぐに強い目と口調を取り戻し、
「これで終わりとは思わないことね。聖騎士団は少しずつ昔の力を取り戻している」
そう言いながら、ロクサーヌは甲板から船内へと戻っていた。
安堵で胸をなで下ろすドローネとロクサーヌの剣を戯れに振り回すチチーナが甲板に残された。
見上げる空は真っ青に澄み切っていた。
終了後の座談会
チチーナ:槍も良いけど、剣もいいわね!
ドローネ:ちょっちょっと振り回さないでください。アブナイです。
ロクサーヌ:ちっ。せっかく二連続出演なのにまるでやられ役じゃん。剣まで取られてさぁ
ドローネ:でも、ロクサーヌさんは強いですよね。
ロクサーヌ:ま、まあな。これでもダイヤモンドだからな。
チチーナ:ふーん。手元にソフィア聖騎士団のカードゲームがあるんだけどさ。オルカナのが強いよねぇ。てか、私のが強くない?
ロクサーヌ:うるさい。私はアンタと違って魔法攻撃も使えるんだよ!
ドローネ:そんなこと言ったら、私が一番弱いじゃない(ノ_・。)
【闇の妹-モンスターメーカー】
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朝日が昇りはじめ、辺りを明るく照らし出すころにドローネたちを乗せた船は東に向けて出発した。ブルガンディからシャルトン半島へ向かう船である。
ドローネは今回は、乗客として乗っていた。一日でも一秒でも早く、向かわねばならない以上、乗せてもらえる船を探す時間も惜しかった。幸い、路銀はブルガンディで稼いだ分があったので、すぐに困るということは無かった。
一日の始まりと共に出発した船は、朝の匂いに包まれて順調に航海を始めようとしていた。雲一つ無い空を見上げていると、胸がすっとする。
「順調にいけばいいんだけどね」
チチーナが甲板で目を擦りながら言う。少し眠たそうだ。ドローネもそう思った。
しかし、その順調な航海はいきなり暗礁に乗り上げようとしていた。
「ここでなら、逃げ場は無いな」
何処かで聞いたことのある声が後ろからする。ドローネとチチーナがはっとして振り返る。
聖騎士ロクサーヌである。既に剣を鞘から抜き、こちらにその切っ先を向けている。
ドローネも振り返ると同時に鞘から魔剣を抜いて構える。チチーナは慌てて手すりに立てかけられてあった槍を握る。
何事かと、下から船員が何人かあがってきたが、皆やっかいごとに首を突っ込む気は無さそうに、遠くから眺めているだけだった。
ロクサーヌは海の上なのでいつもの鎧ではなく、軽量の帷子を身に付けていた。すらりとした長身には白銀に輝く鎧がよく似合っていたが、地味目な帷子では、彼女の長い四肢を隠すことはできずに、白い脚が船員の視線を集めていた。
「覚悟ッ」
ロクサーヌが先制の一撃を放つ。ドローネの間合いの外から、長い脚で踏み込んで、ドローネに斬りかかる。ドローネは剣をかざし、軽く受け流して反撃を狙うが、ドローネの一太刀もロクサーヌに受け流される。
チチーナは様子をうかがうが、敵味方が接近した状態で打ち合ってる間に槍で入る隙は無さそうだった。
ロクサーヌは確実な間合いで攻撃を繰り出し続けた。ドローネも鎧を着ていないので、露出した腕や脚に傷が少しずつ増えていく。ドローネもまた反撃を加え、ロクサーヌの四肢に小さな傷を付けていく。
互いに決定打を放てぬままに、鋼と鋼がぶつかる音が響き、二人の息づかいが静かな船上でチチーナの耳にまで届く。
「・・・うーん勝負はつかなさそうね」
チチーナは呟く。隙があれば助太刀したいが、その隙も無ければ、一対一の決闘の邪魔はしたくないという思いもある。
闇と光の戦いは長い歴史に渡って続けられている。闇が隆盛した期間もあれば、光が全土を覆った期間もある。いずれにしろ、ソフィア聖堂の聖騎士と闇の軍団は出会えば戦う運命にあるのだ。もはや、それは世界のルールであった。
船上の戦いはまだ続いていた。二人はそれぞれ傷を増やしながらも決定的な打撃は与えられずにいた。
そのとき、波に煽られて船が大きく揺れた。ぼーっと見物に徹していた船員の何人かが転び、チチーナもまた手すりに掴まった。
ロクサーヌは大きく姿勢を崩し、上体が宙を泳ぐ。ドローネは小さな体を低くし、体勢を崩さずに剣を横に薙ぐ。
鋼のあげる悲鳴が響き、ロクサーヌの剣が甲板の端まではじき飛ばされる。同時に体勢を崩したロクサーヌは倒れ込む。
勝負あった。ドローネは体勢を整え、魔剣をロクサーヌに向ける。ロクサーヌも覚悟を決める。
ドローネは、静かに魔剣を腰に戻した。
「なっ」
ロクサーヌが声をあげる。
「まあ運が良かっただけだと、私の勝ちは勝ちね。あなたにはやらなければならないことが他にもあるでしょうし、もう邪魔はしないでね」
ドローネはそう言って、ロクサーヌに背を向ける。
チチーナがロクサーヌの剣を拾って、ドローネの言葉に続ける。
「これは没収しとくわね。港についたら返してあげるから、ブルガンディにさっさと戻ることね」
ロクサーヌは肩を落としていたが、すぐに強い目と口調を取り戻し、
「これで終わりとは思わないことね。聖騎士団は少しずつ昔の力を取り戻している」
そう言いながら、ロクサーヌは甲板から船内へと戻っていた。
安堵で胸をなで下ろすドローネとロクサーヌの剣を戯れに振り回すチチーナが甲板に残された。
見上げる空は真っ青に澄み切っていた。
終了後の座談会
チチーナ:槍も良いけど、剣もいいわね!
ドローネ:ちょっちょっと振り回さないでください。アブナイです。
ロクサーヌ:ちっ。せっかく二連続出演なのにまるでやられ役じゃん。剣まで取られてさぁ
ドローネ:でも、ロクサーヌさんは強いですよね。
ロクサーヌ:ま、まあな。これでもダイヤモンドだからな。
チチーナ:ふーん。手元にソフィア聖騎士団のカードゲームがあるんだけどさ。オルカナのが強いよねぇ。てか、私のが強くない?
ロクサーヌ:うるさい。私はアンタと違って魔法攻撃も使えるんだよ!
ドローネ:そんなこと言ったら、私が一番弱いじゃない(ノ_・。)
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