【闇の妹-モンスターメーカー】

"覚醒"

 そこは、何処かの海岸であった。
 彼女は目覚めの微睡みに半刻ほど囚われていたが、少しずつ彼女の本来の記憶が蘇ってきた。真夜中だろう闇に包まれ、星の輝きと月明かりだけが、彼女を照らしている。
 手元には彼女の剣があり、夜の闇の中で暗く煌々と輝いていた。夜の暗さより、なお闇深き業を背負いし魔剣は、永い時間を経てもその輝きを失うことは無かった。
「…闇の色は夜の黒とは違うのね」
彼女は呟いた。
 彼女が此処に居るということは、このウルフレンドの地に光と闇の均衡が取り戻されたということ。そして、それは再び戦いの始まりである。
 目覚めたばかりの彼女には、重すぎる使命が課せられていた。闇夜に生きる暗き者といえど、少女の面影を残す彼女の小さな背には闇の軍団を背負う大役は大きすぎる。
 記憶の狭間を流離う微睡みの中で、赤き魔女の姿を映した闇が彼女に囁く。声ならぬ声が彼女の頭に流れ込み、闇の使命を伝える。闇の軍団として、彼女にはなすべきことがある。激しい圧力と闇の重みが去ったあとには何も残っていない。かすかに、残るは暗き闇の残り香のみ…

 ドローネは今、リザレクションを授かったのである。

 赤き魔女の幻影は、彼女に多くを伝えたわけではなかったが、闇の軍団が今置かれている状況はドローネにもわかった。彼女の姉たちはもはや復活を果たし、それぞれの道を歩んでいる。闇の繁栄のための道を。
 ドローネもまた、闇のために進まねばならぬ道が与えられたのだ。
 闇のため、姉たちのため、赤き主人のためにドローネは立ち上がった。

 そんなドローネのもとに一人の女性が歩み寄ってきた。不覚にも、ドローネはその気配に気がつけずに接近を許した。ドローネが、記憶の狭間から還ってきた混乱の中、目覚めきっていなかったことも原因ではあるが、相手もまた、気配を絶つことなど造作もない達人であった。
 現れた人影は黒い長い髪を靡かせ、東洋の衣に身をつつみ、一つの槍を掲げた女性、チチーナそのひとであった。
 ドローネは手元の魔剣を構えた。
「なにをしにきたの?」
 ドローネが構えを崩さずに口を開ける。槍の名手チチーナの名前はドローネの記憶にも焼き付いている。手加減のできる相手ではない。むしろ、目覚めたてのおぼろげな技術では、不利であり、まともにやり合える相手ではなかった。
 しかし、チチーナに敵対する意志は無く、彼女は穏やかな口調で答えた。
「あなたの元に来たのよ」
「闇に力を貸してくれるというの?」
 その問いにチチーナは黒い髪を掻き上げ、真剣な眼差しで答える。
「私は今、歴史の傍観者にすぎない。今は、あなたの元で歴史を見るさだめ」
 ドローネしかり、このウルフレンドでは全ての存在がなんらかの宿命を背負う。チチーナは歴史の見ることを運命づけられているのだ。ドローネが闇を背負うように。
「わかったわ。これからよろしくね」
 ドローネは魔剣を鞘に戻し、チチーナに右手を差し出す。そして、チチーナが差し出した右手を強く握りしめた。
 過去には、違う勢力に分かれ刃を交えたこともある。また別の時には、肩を並べて戦友となったことも。彼女が頼れる存在であることは、ドローネはよく知っている。
 チチーナもまた、ドローネの右手を握りながら言った。
「こちらこそよろしく。あなたの旅は苦しいものになるわ。今のウルフレンドでは、お世辞にも闇の軍団は強くない。いや、いまや、闇さえも、もっと昏き闇に飲み込まれようとしている…」
 チチーナの言葉を遮り、ドローネの口から自然に言葉が出る。
「ベイオエント…」
 その名前さえも暗く、その響きさえ不快に満ちた名。口にするだけで禍を呼び、不幸を撒く存在。
「そうね。この荒れたウルフレンドに光が差すとしたら・・・おっと、ごめんなさいね、闇が再び勢力を取り戻すには、ディオシェリルの力が不可欠よ」
「わかってるわ。私は闇の軍団よ。与えられた使命は全うする」
 ドローネは砂地を踏みしめ、拳を握りしめ決意を固める。深き闇の業に負けぬ強い心が彼女を満たし、夜の闇の中へ彼女を押し進める。
「まずは、イフィーヌたちを探さなきゃね」
 チチーナの言葉に、ドローネは小さく肯いた。使命を果たすうえでも、愛する姉たちは必ず力になってくれるだろう。
 そして、今再び、光の中に闇が一筋差し込んだ。ドローネは、チチーナとともに新たな一歩を踏み出した。
 
 
 
終了後の座談会

チチーナ:はーい、というわけで、ここに
ドローネ:闇の妹"覚醒"(リメイク版)をお贈りいたしまーす。
チチーナ:ま、始まったばっかだし、語ることなんて何もないのよね〜
ドローネ:うん。とりあえず、姉さま達を探さなくっちゃ
チチーナ:っていうか、私ってイマイチ知名度低いのよねー
ドローネ:チチーナさんは初代カードゲームからの参加なのにね
チチーナ:そうなのよ、だいたい私、五番目に強いのよ。アレじゃ
ドローネ:ガンダウルフさん、アルシャルクさん、ディアーネさん、タムローンさん、で
チチーナ:そう。次が私なんだけど。上四人は超有名人じゃない?
      でも、私はなんか・・・
ドローネ:まあ、落ち込まないでください・・・
チチーナ:きぃぃぃ。アンタだって、私より有名人じゃないのッ
ドローネ:あわわわわ、落ち着いて〜

コメント

nophoto
ごん
2006年8月2日1:22

僕はいつだって落ち着いてますぜ?!
あ、僕のみくしぃ足あと700のピタリ賞はあなたでした。おめでとう。

nophoto
かざもりはや
2006年8月6日22:18

リザレク版闇の妹、素晴らしいですね。
以前のものも楽しませていただきました。
今後のご活躍に期待しております。

夕輝
夕輝
2006年8月9日23:46

>かざもりはやさん

コメントありがとうございます。
以前にも掲示板の方にコメント頂いた時は
更新予定無しと突っぱねてしまって申し訳ない。
前回とほぼ同じ文章ですが、再びコメント頂けて嬉しいです。

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