夕輝とLW-Alice

2006年6月6日 ShortStory
【LW-Alice】

注釈:固有名詞は全て仮名。
本名は
サキュバス族を除くナイトウォーカーはドイツ系
(サキュバス族は特殊)
デーモン族は72柱+α系を命名規則とする。
人間族は王国がイギリス系、帝国と連邦がアメリカ系とする。
猫族はフランス系命名規則を適用する。
//--注釈終わり
 
アリスは大陸生まれであった。
闇の血族における騎士階級の多くが
本島を出生の地としているのであるが、
アリスが大陸生まれであることは
珍しくあり、またよく知られていることでもある。
もっとも完全な実力社会において、
出生の地が彼女の人生に与える影響は零である。

彼女もまた例外ではなく、物心ついたころには独りであった。
彼女の種族は徹底した個人主義であり、
それは親と子の間でも変わりない。
大陸東部の闇森を住まいとしていたおかげもあり、
北部や西部の人間と相まみえることなく、
順調に成長を続けた。
元々強力な個体であるため、
既に、よほどの人間でなければ引けを取ることはなかった。

アリスは、近隣の村や商船を少しずつ襲い糧とした。
人間の爆発的な繁殖力は、彼女の種族の何百倍であり、
彼女は自身の強さもあり、食事に困ることはなかった。

闇森から南東部は大陸では唯一の
闇の勢力下である。
南東部の沿岸部には、バイオレットの集落がちらほらと見られ、
闇森周辺には、ナイトウォーカーが多く住まう。
大陸の東部には、人間種族の大きな国家などは存在せず、
東北部の大森林にエルフの集落がある以外は、
光の血族の大規模集落は見られなかった。

アリスが生まれたのは、天使戦役の直後である。
世界は戦役の傷痕が生々しく残り、
光と闇の血族は共に余裕無く
復興に全ての力を注いでいた。
特に光の血族のうちエルフは甚大な被害を受けた。
元々、銀の眷属との戦いの傷が癒え切らぬうちの
新たなダメージにもはや種としての没落は
避けられなかった。

アリスがこの世に生まれ落ちてから三十年を数えるころには
アリスは聖教会の神官騎士と渡り合えるほどに成長していた。
同時に、有名にもなり、彼女はより戦いへと引き出された。
好戦的な性格と湧き出るような討伐隊が彼女をより強くした。

エリアルと出会ったのもこのころだ。
既に、軍に属していない闇の血族員の中では
最強とも呼ばれる、この闇森のナイトウォーカーは
闇森近辺の勢力図を形成するのに一役買っている。

アリスはエリアルがあまり好きではなかった。
そもそも、彼女の種族は孤高の種族であり、
他の種族を下僕とするならともかく、
なれあうということは珍しかった。
ただ、エリアルは強かった。

エリアルには、既に一人の子が居た。
その子バーストはアリスの良きライバルとなった。
別段、訓練というわけではないが、
アリスは気が向けばエリアルと剣を交えた。

しばらくして、
エリアルはバーストとアリスに
本島へ渡るよう薦めた。
バーストは乗り気であったが、
アリスは気が進まなかった。
結局、アリスは本島に渡ることになったが、
それはバーストから一年近く遅れてであった。

軍に所属してより二人は昇進を重ねた。
エリアルの推薦があったこともあったが、
二人は既に強かった。
二人は空軍に所属していたが、
アリスは、当時の陸軍司令であったリバイアから気に入られていた。
軍に所属する闇の血族員はその半分がデーモンである。
リバイアもデーモンである。残りの半分はバイオレットであり、
ナイトウォーカーである。

二人が小隊を指揮できるほどに昇進したころに、
ガーベルシュタイン戦役が起きた。
戦役の名は戦役を起こした闇主の名前をとって付けられた。
陸軍司令、空軍司令が共に反対するなか
なかば無理矢理に開戦された戦役であったが、
結局は闇の血族は敗退する。
敗退した理由は一騎打ちで闇主ガーベルが
エルフの勇者に敗北を喫したことによるものであり、
決して闇の血族軍が光の血族の防衛に屈したわけではなかった。

実際に、アリスやバーストが所属する空軍は破竹の勢いで進軍を
重ねていた。

戦役後、ガーベルは闇主を退役し
新たな闇主として空軍司令マチルダが就任した。
このマチルダが、血族会議の下地を築いた闇主である。
戦役の活躍から、アリスは中隊指揮まで昇進した。
この戦役後は断続的な小競り合いはあったが
当面の間大きな戦は起こらなかった。
当面というは、彼女たちの時間の尺度であり、
人間側ではガーベルシュタイン戦役は既におとぎ話になりつつあった。

マチルダが闇主在任の後期には
アリスは、親衛としてマチルダの直属となった。
親衛、及び近衛は闇主が、軍の決定外で
独自に動かせる部隊であり、また護衛を兼ねている。
バーストもまた親衛候補であったが、こちらは
空軍の中核まで昇進していたため、
空軍司令の反対に遭ったため断念した。
マチルダは歴代闇主の中では珍しく、
結局、親衛をアリス一人しか置かなかった。

血族会議の下地はマチルダによって創られ、
次の闇主であるハウザーが今のカタチへと作り上げた。
血族会議は定期的に開催され、臨時召集は闇主が召集できる。
闇主、軍の高級将校(陸軍司令、陸軍司令補佐、空軍司令、
空軍司令補佐、参謀部長将)、
それに加えて、主に代々の闇主からなる騎士階級のメンバーを加えて
円卓会議の形をとる。
光の血族の血族会議は、これを参考に構成されているが、
参加者は光の血族の各種族から二名ずつの選抜である。

ハウザーが血族会議の闇主となったときには、
騎士階級者はマチルダ、ガーベル、ヴェパール、エリアルである。
陸軍司令はリバイアが継続し、空軍司令はミッドナイトであった。
当時、参謀部は創設間もなく、血族会議に参加できるほど
組織としてまとまってはいなかった。

ハウザーは、参謀部を創設した本人であるが、
血族会議の洗練、さらには軍部の改革に成功した闇主である。
また、優れた将校であり
彼の在任中は、闇の勢力下は縮退することはなかった。

このころがもっとも闇の勢力が広がっていた時期でもあり、
大陸の、南西部の未踏砂漠と東部の闇森より南部は
完全に勢力下として掌握していた。
また、リリー一族が組織として未熟であった故に
闇森よりさらに北東部の樹林地帯もほぼ勢力下であった。
といっても、ハウザーは戦を良しとせず、
リリー一族とは戦わず馴れ合わずを押し通した。

ハウザーが退任し、後任にリバイアが就任したころには、
バーストは空軍司令補佐まで昇進した。
アリスはマチルダ、エリアル、リバイアの推薦を受け、
また血族会議で正式に承認され、
闇主就任前に騎士階級として血族会議に参加することとなった。
このころになると、バーストの妹にあたる双子のフレアとフリーズが
空軍内で小隊指揮から中隊指揮へと昇り続けていた。

このころになると、聖教会の勢力が徐々に広がり、
闇の勢力は後退を余儀なくされた。
特に、聖騎士団の襲撃により、闇森以北の拠点や集落は悉く陥落した。
闇森自体はエリアルの生家であり、
強力なナイトウォーカーの義勇軍が常駐していたこともあり
一進一退を繰り返していた。

リバイアは血族会議にて、大規模反攻を行うかの閣議を開いたが、
血族会議では承認されなかった。
軍部はそれを不服としたが、当のリバイアは反攻に消極的であった。
しかし、帝国、共和国からなる大部隊が
本島に対し攻撃を仕掛けてくるようになったころには
そうも言ってられなくなった。
本島と大陸の海峡付近で、人間の侵攻を食い止めるための
戦闘は激化していった。

空軍にはそれなりの被害が出てはいたが、
ガーベルとエリアルを除く騎士階級保持者が前線に出張って
対応しはじめたころには、戦線は整理され
人間は被害の大きさに撤退し始めた。
寿命との兼ね合いで極力戦闘行為は慎みたい
デーモン一族だが、いざ戦闘が始まれば
種としての力は他を寄せ付けぬものであった。

アリスは、空軍の一個大隊の指揮を行い戦線に出ていた。
主に大陸に上陸しての強襲が任務であった為、
指揮する部隊への被害は大きかった。
アリスは被害を最小限にするため
自身が先頭を切って戦陣を敷くように勤めた。

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